キミノカケラ〜群青色の空と君と〜


「落ち着いたか?」



中庭に移動した私達は白いベンチに腰を下ろすと、シュウは湯気が上がるカップココアを私に差し出した。

コクンと頷くと、それを受け取って冷え切った手を温めるように両手で持つ。



「何があった?」



シュウは私が一息ついたのを見た後、私を気遣うように言った。



「……お父さんに会った」



中庭では車椅子に乗った患者さんがスケッチをしたり、看護師さんと歩行器のお爺さんが一緒に散歩をしたりと和やかなムードが漂っている。

なのに、私の周りだけが真っ暗で別の世界にいるような気分だった。



「えっ……お父さんに?」



酷く驚いた声のシュウ。


それもそうだ。
まさか数年も会ってなくて、音沙汰もなく、生きてるのかもわからないような人にこんなとこで再会するなんて、誰が予想出来るだろう。



「ここで働いてるんだって」


「そうなんだ……灯台下暗しだな」



コクンと静かに頷く。


母親は知ってたんだろうか。
多分、知らないんだろう。

あの人のことだから、お父さんがここで働いてるってわかったら怒鳴り込んだり、何かしらアクションは起こしてたはずだし。



「嬉しくなかったのか?」



シュウは私が大事にしてるリサちゃん人形がお父さんからの贈り物だって知ってる。

あんなにボロボロになっても、お父さんから唯一もらった人形を宝物のように大事にしてる私を見たら、お父さんと再会したことを私が喜んでると思うのもおかしくはない。

なのに、予想と反して私が嬉しくなさそうだから、シュウも戸惑っているんだと思う。



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