キミノカケラ〜群青色の空と君と〜
「お父さん、再婚してるみたい」
「え?」
「小さい子供もいてね。その子、凄く可愛くて。それに、もう一人最近産まれたみたい」
膝の上でギュッと拳を握る。
シュウは何も言わずに私の話を聞いている。
「あはは。ビックリだよね。ホント……でも、もう数年も経ってるし。再婚しててもおかしくはない、か……」
平然を装って笑ってみせる。
だけど、うまく笑えなくて、逆にじわりと視界が滲んだ。
「……会いたいって思ってた。お父さんから貰った人形は私の宝物で、いつも一緒にいた。唯一の友達…ううん、家族だったの。お父さんが側にいてくれるような感じがして……いつもそれを通してお父さんに話しかけてた」
涙がとうとうポタポタッと手の甲に落ちる。拳が震えて止まらなかった。
息も苦しい。
いつもどうやって呼吸をしていたのかわからなくなる。
「なのに、嬉しくなかった。再会したらあれを聞こう、これを聞こうって……聞きたいことがたくさんあったのに、言葉が何も出てこなくて。顔を見たら、憎しみしか湧いてこなくて……逃げ出したの」
「サチ……」
シュウが私の背中をポンポンっと撫でる。
その手があまりにも優しくて、温かくて、更に涙が溢れてきた。
「お父さんに背を向けた瞬間、お父さんをパパって呼ぶナオちゃんの声が聞こえた。それに答えるお父さんの声も」
脳裏に嫌でも思い浮かぶ。
ナオちゃんの可愛らしい高い声で、「パパ」って呼んだあの瞬間。
私の胸に何か刺さったみたいに凄く凄く痛くなって……
私の中の憎しみが一気に膨れ上がった。