キミノカケラ〜群青色の空と君と〜


「なぁ、今度もう一度話してみないか?」



シュウは私を離すと、真摯な瞳でジッと見つめてくる。



「え……?」


「お父さんと。もちろん俺も立ち会うから、逃げずにお父さんとちゃんと向かい合ってみないか?」


「でも……怖いよ」



怖い。お父さんの口から決定的なことを言われるのが。

次何かあったら、私は私でいられる自信がない。



「怖いかもしれない。けど、ここで逃げたら後悔する日がきっと来る」



シュウの真っ直ぐな目が私を射抜く。

目を逸らせない。逆に引き寄せられる。



「俺も怖かったよ。だけど、一人じゃなかった。サチも哲二さんも菜摘さんもいる。だから頑張れたんだ。サチだって同じだ。俺がいる。哲二さんも菜摘さんも見守ってくれてる。そうだろ?」



“一人じゃない”

“俺がいる”


シュウの言葉がじわりと身体の芯から温めていく。


お父さんが出て行ってから私は一人だった。

友達はいない。
学校では虐められ、先生は見て見ぬ振り。

親戚との付き合いはない。
お母さんにとって私はいらない存在。

だから、ずっとずっと一人だった。


だけど、今の私には大切は人がいる。

シュウ、哲二さん、菜摘さん。
他にも、時計広場の仲間も私を受け入れてくれた。
今暮らす街の人達も優しい。


周りの人達が私の存在を認めてくれる。

私は初めて、一人じゃないんだって思える。



< 112 / 180 >

この作品をシェア

pagetop