キミノカケラ〜群青色の空と君と〜


「ねぇ、なんかこの辺臭くない?」



一人が鼻を摘む素振りをすると、周りも「ホントだ」と声を合わせて頷く。



「ちょっとぉ〜!鷹野の前で失礼だよ、皆。こいつん家、ガスも水もまともに出なくてお風呂にも入れないし洗濯もろくに出来ないんだから」



最悪なことに、私とコウノは小中高と同じ学校で私の家庭事情を知っている。


親が離婚して父親が出て行った時から、うちは貧乏になった。光熱費が払えず、止まることもしばしば。


体操服は滅多に洗えなくて汚れていたし、お風呂だって入れず、真冬でも公園の水道で髪の毛を洗っていたこともある。


それをコウノは何処から仕入れた情報なのか、いつもいち早く知っていた。


こいつは昔から私をいじめるのを生き甲斐としていて、やる事が年々酷くなってきている。



「お前さ、臭いからいい加減学校来んなよ。汚臭が私達にまで移んだろうーが」



声を一層低くして、コウノは付けまつ毛でバサバサの大きな目で私を睨みつける。


甘ったるいバニラの匂いの香水。
それが余りにもどぎつくて、思わず顔を顰めた。





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