キミノカケラ〜群青色の空と君と〜


小さくなるおじちゃんの背中を見ながら、ふふふと笑うと、シュウは「どした?」と首を傾げた。



「私、この街が大好きだなーって改めて思ったの。街の人は温かくて優しいし、景色は綺麗だし、空気は美味しいし」


「そうだな。俺もこの街が大好きだよ」



繋がれたシュウの手をキュッと握る。

大好きだって私に言ったわけじゃないのに、何だか胸が高鳴った。



「ずっとここにいたい……」


「サチ?」


「ずっと……ずっとずっとずっと、この日常が続けばいいのに」



本心だった。心から、そう思う。


だけど。
お父さんに会えて嬉しい。
お父さんがああやって思ってくれてたって知って、凄く凄く嬉しい。
これもまた本心なんだ。


でも、この日常を壊すのが怖い。
どうしたらいいのかわからない。

不安が胸の中を渦巻く。



「なぁ、サチ。これは俺の単なる独り言だと思って聞いてくれる?」



手を握り直したシュウは、私の顔を覗いて言うと空を見上げた。

「うん」と、頷いて私も同じように空を見る。


さっきまでは燃えるような紅色一色だったのに、今は群青色と見事なグラデーションで空一面を彩っている。

息をのむほど綺麗な空だ。



「俺は今、両親と離れて暮らしてる。ここまで来るのにいっぱい傷ついて傷つけて、悩んで苦しんだけど、今はこの形が正解だと思ってる。前に感じなかった親の愛情も感じる。離れて生活してるのに、だ。こんな家族の形だってある」


「うん」


「だけど、今まで離れ離れだった家族が再会して一からやり直す。最初は上手くいかないことの方が多いだろう。それは当然のことだ。お互い別々の生活があったんだから」


「うん」



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