キミノカケラ〜群青色の空と君と〜


沢山の管と酸素マスクに繋がれて、ベッドの周りには多数の機械がある。

心電計、心拍数、体温、血圧、呼吸などバイタルを現すモニターも酸素マスクも映画でしか見た事がなく、その厳かな雰囲気に少し気怖じしてしまう。



「立花さん。昨日お話した件、考えて頂けましたか?考える時間が少なくて悩まれるかと思いますが、早急にお返事を戴きたいと」



原田先生がシュウのお父さんに言うと、お父さんとお母さんは目を見合った。
そして、何かを決意したように頷くと、先生を真っ直ぐと見据え「先生」と口を開いた。



「その件ですが、昨日家内と話し合って決めました。これは哲ちゃん、菜摘さんにもサチホさんにも聞いて頂きたい」


「わかりました。では、ここでお聞かせ願えますか?」



私には何の話か予想もつかない。

多分、哲二さんも菜摘さんも心臓外科に勤めていた経歴を持つのだから、大体のことはわかっているんだろう。

二人の強張った表情を見ると、この話が辛い話なんだと思う。

私も心の準備した方がいい、そう思った。



「人工呼吸器での延命治療はしません」



お父さんの覚悟を決めた声が病室に響いた。


延命治療をしない。
それはシュウの死が、身近に感じた衝撃的な一言だった。





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