キミノカケラ〜群青色の空と君と〜
「……嘘だよ、そんなの」
絞り出すような震えた声で言うと、菜摘さんは「サッちゃん…?」と戸惑った声で私の顔を窺った。
「それがシュウの願い……?本当にシュウがそう言ったんですか?」
「それは、」
「私はこの数ヶ月シュウとずっと一緒にいたけど、そんなこと一言も聞いてません。寧ろ、シュウは生きたいって……自分の命を自ら捨てるなんて馬鹿らしいって、そう言ってました。そんなシュウの願いが自然と眠りたいだなんて、私は信じられません‼︎」
シュウのお父さんの言葉を遮って、私は捲し立てるように言った。
グッと言葉を飲み込むシュウのお父さん。お母さんは持っていたハンカチをギュッと握り、原田先生は静かに私を見据える。
哲二さんは私の側まで来ると、「サッちゃん、少し落ち着こう」と肩に手を置いた。
「私は人工呼吸器のこととかよくわからないけど……でも、1パーセントでも可能性があるなら、その可能性に懸けてシュウを信じるのが親だと思いますっ!」
「サッちゃん‼︎」
「だってそうでしょ?哲二さんはそれでいいんですか⁉︎シュウを…シュウを見捨てるんで、」
ーーーーーパチーンッ‼︎‼︎
私が全てを言い終える前に、病室に乾いた音が鳴り響いた。
ピリピリ痛む頬。
そっと触れると、微かに熱を帯びている。指が触れているのに感覚があまりない。
「あなた……っ」と、菜摘さんが哲二さんの腕を掴む。荒い呼吸を繰り返し目に沢山の涙を溜める哲二さんを見て、やっと哲二さんに叩かれたのだと理解した。