キミノカケラ〜群青色の空と君と〜


コウノ達が去った後もなかなか動く気になれなくて、再び便器の蓋にストンと座る。


寒い。
十月も下旬に差し掛かってるこの時期に全身ずぶ濡れにされて、着替えもせずにいるんだから当たり前だけど。


あー…教室にジャージあったかな。
っていうか、ここから教室まで誰にも会わずに移動出来るかが疑問だ。


こんな姿、見られたくない。
“私、虐められてます”って言ってるようなもんじゃない。

そんなの、惨め過ぎる。


もう少し待とう。
部活以外の生徒が帰るまでここにいた方がいい。


冷えてきた身体を抱き締めるように摩っていると、話し声と共に数人の足音が聞こえてきた。


またコウノ達かもしれない。
戻ってきたのかも、しれない……


心臓がドクンッと跳ね上がる。
嫌な汗が一気に吹き出てきて、少しでも自分を落ち着かせるように目を閉じた。


話し声が徐々に鮮明になる。
その声が、コウノの声より低いことに安心して思わず、ハァと息をついた。



「ねぇ、そういえばタチバナっているじゃん?A組の」



足音はトイレの手洗い場で止まった。
音を立てないように、ジッと身を顰める。




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