キミノカケラ〜群青色の空と君と〜
「久しぶりに登校した日。サチがトイレからずぶ濡れで出て来たんだ。俺、声掛けたんだけどサチの耳に届いてなくて……死んだような目してたサチがその日から忘れられなかった」
「ああ…見られちゃってた、か……」
まさかよりにも寄ってそんな場面を見られてたとは思いもしなくて、気まずさを誤魔化すようにハハハと笑った。
「次の日も、その次の日も。サチを見掛ける度に制服が汚れてたり、ズタズタにされた上靴を抱き締めながら裏庭に逃げて行ったり」
そんな醜い所を見られてたんだと思うと、恥ずかしさと惨めさでシュウの顔が見れない。
今、シュウがどんな顔をしてるのか。
気になるけど、私は地面に視線を移した。
「それから少しして、また学校を休むことになって……あの子は今どうしてるだろう。泣いてないだろうかって、ずっと考えてた。俺、サチの辛そうな顔しか知らないから、あの子はどんな声でどんな表情で笑うんだろうって想像したりして。そうしてるうちに、サチの本物の笑った顔を見てみたいって思うようになったんだ。そしたら、現れた。あの広場に、サチが」
「ごめん」と、気まずそうに呟くシュウに、「ううん…」と首を横に振る。
何に対しての“ごめん”なのかわからないけど、シュウの言葉に薄っぺらい同情は感じなかった。
この前まではシュウの言葉一つ一つがムカついてたのに。自分の心の変化に、微かに笑った。