キミノカケラ〜群青色の空と君と〜
部屋を出ると、すぐに派手な格好の母親の姿が目に入った。
白い壁に映える深紅のふわふわのファー付きコートと、細い目の網タイツを履いて。壁に不機嫌そうに凭れ掛かっている。
久しぶりに見る母親の姿。
一ヶ月前より化粧も服装も派手になったような気がする。
この前連れて来てた男とは別れたんだろう。
あの人は、その時に付き合ってる男の趣味に合わせて身なりを変える人だから。
今回の男は多分、相当な派手好きなんだと思う。
母親は私に気付くと、私をゴミを見るような目付きで睨み舌打ちをした。
「こんのクソガキが」
高いハイヒールをカツカツ鳴らしながら私の目の前まで来ると、ボソッとそう言いながらチェーンバックを思いっきり振り上げる。
それは私の顔に見事に命中。次第に頬がジンジンと痛み出し、そっと触ると指に真っ赤な血が少量付いた。
「ちょっと!鷹野さん!」
女性警察官が慌てて私達の間に入る。
だけど、母親の勢いはそんなことでは止まらない。
「お前何やってんの?私まで警察にああだこうだ言われたじゃねぇかよ。ざけんなよ?」
いつもに増して激昂している母親。
もし、今ここが警察じゃなかったら、怪我を負う程度じゃ済まされないだろう。
それぐらい今日の母親から放たれるオーラは恐ろしいものだ。