キミノカケラ〜群青色の空と君と〜


張り詰めた空気。
悔しさを抑えるように、シュウが正座した足の上で拳をきつく握ってるのが見えた。



「わかってます。だけど、あの家にいるのはもう嫌なんです。口を開けば勉強しなさいだの体のことを考えなさいだの。したいこともさせてもらえない。入院すれば監視されてるように面会時間中ずっと母さんがいるし、息が詰まる。俺はもっと自由に生きたい。したいことをして、今まで我慢してきた分思いっきり楽しみたい。この人生は俺のものだ」



微かに目を見開く哲二さん。


私も初めて聞いたシュウの話に驚きを隠せない。

私から見て、シュウのご両親は本当に息子を大事に思ってるように見えた。

だけど、シュウにとってそれは重く、息が出来ないぐらい限界に来ていたんだ。

今になって、シュウがあの広場に来ていた理由がわかる。


私、シュウのことまだ何も知らないんだと思うと心が痛くなった。



ややの沈黙のあと、哲二さんが口を開いた。



「サチホさんはどうするつもりだ?」


「私は趣味で人形の洋服を作ってネットで売ってます。今までも、そのお金を食費に当てたりしてきました。これからはそれを本格的にやっていこうと思ってます。それだけで食べていけるとは思ってないけど、高卒認定を取るまでは続けていければと思ってます」



学校を辞める分、時間が出来る。
そうしたら製作時間が増えて、今まで以上に商品も縫えるはずだ。

有難いことにそれなりに予約も頂いてるし、あとは私のやる気次第だと思う。



「確かに私達は少し甘く見ていたかもしれません。でもシュウと力を合わせれば、何とか乗り越えられると思うんです」


「おじさん、おばさん。俺らはまだ未成年で子供です。でも、お二人になるべく迷惑を掛けないようにしますから。どうか見守っていてくれませんか?」



「お願いします」と、二人で頭を下げる。
哲二さんと菜摘さんに、私達の覚悟が伝わるように。




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