キミノカケラ〜群青色の空と君と〜
菜摘さんが、「あなた……」と諭すように言うと、哲二さんが、はぁ、と息を吐いた。
「迷惑掛けないとか寂しいことを言うな。俺もこいつもシュウのことは息子だと思ってる」
「おじさん……」
「二人の覚悟は十分伝わったよ。試すような言い方して悪かった。ここでの生活費は気にしなくていい。どうせ使ってない部屋だし、私達も二人が居てくれると助かる。若いもんがいると元気が出るしな」
さっきまでの真面目な声色とは違い、穏やかな声と表情に、緊張でカチコチに固まった身体から力が抜けていく。
「ええ、そうね。活気が溢れて毎日楽しくなりそうだわ」
「うちには子供がいない。シュウとサチホさんが嫌じゃなければ、ここを本当の家だと思って甘えなさい。出来る限り、応援するつもりだから」
二人の寛大な心遣いに、私達は揃って頭を再び深く下げた。
「ありがとうございます!本当に……ありがとうございます!」
シュウが声を詰まらせながら言う。
私もお礼を言いたかったけど、感極まって言葉にならなかった。
どこの馬の骨かもわからないような赤の他人の私まで受け入れて下さるなんて、こんなにも心が広く温かい人達に私はかつて出会ったことがない。
自分を受け入れてくれる。
何の価値もないと思っていた私を認めてくれる。
こんなに嬉しいこと、他にあるだろうか。
涙は止める間もなく、頬を流れ落ちる。
「あらまぁ」と、私の隣りに移動して背中を撫でてくれる菜摘さんの小さな手が凄く温かくて、私は心が満たされていくのを感じた。