4番青年の快走
「じゃあミユキさんと話してこようかな。小麦ちゃん後よろしく」
「はーい」
先生が荷物と共に腰を上げて立ち上がった。看護師さんたちもあとに続く。
よろしく、って、あたし何もしないけど。
まあまあ散らかった伊吹の部屋から3人が出て行く。
アンタね、AVくらい机の上からどかしときなさいよ。しょーもねえな本当に。
「サンキュー先生看護師さん」手を振る伊吹に、先生がドアノブに手をかけながら振り返った。
「伊吹。小麦さんちゃんと大事にするんだぞ」
そのままガチャリ、部屋の外へ。
……茅野先生って、こういうところ、ある。
「だとよ。大事にしなきゃ」
「される筋合いないんですけど」
「わーお塩対応」
「別にいつも通りでしょ」
前からこんなでしょ。今更変わってあげたりしないわよ。いつも通りって決めてるんだから。
ベッドの上であぐらをかく伊吹より高い目線にいたくて、キャスター付き椅子に腰かけた。
あれ、プリン頭がきれいになってる。
「あたま、朔?」
「あーそうそう。あいつすごくね?そろそろプロでよくね?」
「ほんと丁寧な仕事するわ。なんで幼なじみなのにこうも違うんだろ」
「うっせーうっせー」
朔。さすが世話役。
あたしと伊吹が出会ったときも朔は伊吹の隣にいた。