4番青年の快走
あたしとか他のやつらとは伊吹と過ごしてきた時間が違う朔に、嫉妬したことも、昔は何度か。
「……うっわ」
「え、なんだ急に」
「なんでもない。昔のこと思い出しただけ」
「あー出会い?俺らの出会い?」
こう、意外と勘がいいところ、本当やだ。こいつ。
伊吹と朔とは高校が同じだった。
こいつがちゃんと来ていたことなんてほとんどなかったけど。
青かったな。ほんと青かった。若かった。
「お前ソクバク激しかったよなぁ昔」
「うるっさいわね。途中からしなくなったでしょ」
「たしかに。なんで?」
「しても無駄って気付いたから」
「あー、さすがじゃん」
あたしなんか放ったらかしで朔たちを優先してることも他の女の相手してることも、途中から気にしなくなった。
ていうか、束縛なんてできないって気付いた。
伊吹は自由な人間だった。
誰かに言われた通りに動くなんてできっこなかった。こいつは自分で自分のこと決めたいやつで、そこに他人が入り込めるなんてことあり得なかった。
しかも似合わない。
誰かの言葉に動かされてる伊吹を想像したら似合わなすぎて笑えた。そんなこいつ見たくないとさえ思った。
あたしなんかに縛られてほしくないとさえ。
それだけ、惚れてたってことじゃないの。知らないけど。