4番青年の快走
「つかアレじゃね俺らの出会いって」
伊吹が窓の外の澄んだ空気を見つめながら、ふと口にする。
「“風のイタズラ”」
「バッカじゃないの?」
「はあ?」
懐かしげに笑った伊吹に、あたしも同じくきらめく木々を見ながらため息をひとつ。
あんなの風のいたずら装った計算に決まってるでしょ。計画通り。好きだったのよ。最初から。
目立つ頭も制服も、たまにバスケしてるときも屋上で寝てるときも、バイクで学校の前にいるときも。
アンタね、キラキラしてんのよ。ムカつくくらい。
「今日天気めっちゃ良くね?外出ようぜ」
「何するの外で」
「芝生で昼寝だろ!」
心地よい風に我慢できなくなったらしい伊吹が、外に足を踏み出した。
1歩、また1歩。細くなった足で歩いていく。
あたしより細くなったら許さないわよ。
「日焼けするんだけど」
「ハァー?気にすんなお前白すぎんだよ小麦のくせに」
「名前関係なくない?」
「素直に小麦色んなっとけ」
この自由人め。何だその理屈。
丘の真ん中の木々が集まる場所まで来て、ふたりで芝生に腰をおろす。伊吹はそのままコロンと仰向けに寝転んだ。
天気がいいし雲はゆっくりだし、小鳥が鳴いてる。