4番青年の快走
「うわー平和」
「アンタの口からそんな単語出るなんて」
「丸くなったから俺」
「うん、たしかにね」
暴走族、やめてからもバイクは好きだったけど。頭も格好もまだ結構目立つけど。
成長、したわね、確実に。
「あー、むぎってなんで俺のこと好きなんだろうな」
訂正。成長してない全く。あの頃のまま。どうしようもないクソ男のままだった。
木の幹に上半身をゆだねたままあたしは、仰向けのまま目だけこっちに向ける伊吹に吐き捨ててやる。
「アンタのそういうとこマジでクズだと思うわ」
「はー?」
別にもう好きじゃないし。
そんなに未練タラタラで友達になんて戻れてるわけないでしょ。バカじゃない本当に。
「いつもアンタの元カノ軍団でアンタの悪口言い合ってるから安心してよ」
「うっわ。なんでお前らそんなに仲いいんだよマジで」
「共通の敵がいるからでしょ。アンタ」
「女コエーわー」
美形ぞろいの元カノたちを見ると、こいつが相当面食いだって実感する。
分かりやすいし切り換えが早いし適当だし。クズよクズ。本当男としてはありえない。まあ別に誰もそこまで気にしてはいないんだけど、実際は。