4番青年の快走
生い茂る緑の隙間からさす光が茶色い髪を輝かせて、ああほらやっぱり。またキラキラしてる。変わらない。
「してほしいわけ?」
「別に」
こういうところが、クズだって言ってんのよ。
幹に預けてた体重を移動させて、くやしいから、ほんの一瞬。
「……ふは、ゴチ」
「うるさい」
「照れてんのかわいー」
「アンタ本当っ、」
軽口の止まらないバカに文句のひとつやふたつやそれ以上言ってやろう。そう思って向き直れば、強く手首を引かれて。
あーもう、油断した。
「俺の勝ち」
「……呆れた」
「照れたんじゃん」
「今更、照れる必要、ないでしょ」
「ははっ」
キスした後に自分の唇舐めるのが伊吹のくせ。
変わらない。何も変わらない。
腹抱えるんじゃない軽い笑い方も、笑顔も、そのまま。
伊吹が、笑ってる。
これが当たり前じゃないことを知ってる。いつもあるわけじゃないこと、よく知ってる。