4番青年の快走




頭をふるふる振る俺を見て、満足そうに煙を吐き出す伊吹さん。


「お前まだボサボサだからな」というヒロを無視して、両目でその顔をとらえた。



病人の癖に喫煙て、アンタ。

知らねえんすか、煙草が身体によくないこと。
早死にするってこと。
死ぬっすよ、伊吹さん。


言葉はぜんぶ、喉の奥でおさえこむ。


知らねえならまだよかった。けど、そんなわけない。身体によくないことも、自分が病人だってことも。知らないわけがない。




伊吹さんは同じ高校のふたつ上だった。


かなり目立つ存在で。ほとんど学校で姿を見せないくせに、あの学校の生徒も隣の学校の生徒もみんな、この人のことを知っていた。

噂も逸話もよく聞く。たまにバイクでグラウンド走り回ってんのも見たし体育館でバスケしてんのも見た。屋上で昼寝してるのも見たことはあった。


だけど知り合ったのは、あの錆びくさい倉庫。


なぜ俺がそこに行ったのかよく覚えてない。誰かに連れていかれたのか気の迷いか。

溜まり場の真ん中にはこの人がいた。

髪は真っ赤だった。

何回ブリーチしたんだよ絶対将来禿げるだろってくらい真っ赤。
なぜそうなりたかったのか未だに俺には理解できねえ。なんだったんだアレ。



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