4番青年の快走




伊吹さんは、自由だった。



なあ走りに行こう、と周りを誘ったかと思えば次の瞬間大の字で腹出して寝てみたり、約束の時間なんてあってないようなモンで急に音信不通になったり、かと思えばひょっこり顔を出して突然山に行きたいと言い出したり。

……あぁ、あと、見るたび違う女といた気がする。


自由っつうか自己中の塊みたいな人。
でも悔しいけどなぜか憎めない人。

この人は、話すとき必ずこっちを両目で見るから。だから憎めないんだと、俺は思ってる。

クソ適当人間なのに、ふたつの目で人の心を見透かすような、理解するような、そんな。



何事にも無気力だった俺に、バイクのことを一方的にしゃべりかけてきた。マジで何言ってるか分からなかった。興味ないっすと俺が言うのを流して無視してしゃべり続けてきた。
マジうざかった。




「伊吹さんは昔も今もクソうざい」

「ああ?誰に向かって言ってんだぶん殴るぞ」

「…………」



やってみろよ。今、できるもんなら。




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