4番青年の快走
「……いややっぱウゼェっす伊吹さん」
「は?」
「悠真お前は何をそんなに伊吹さんに反発すんだよ反抗期か?」
「違えようるせえよ」
伊吹さんはまた1本煙草を消費していた。
そういや好きだったよな、煙草。倉庫イチのヘビースモーカーだった。
この人の肺、もう真っ黒だろうな。
「悠真が俺に反抗的じゃなかったほうが少ねえな」
「マジすかシメてくださいよこいつ」
「何回シメても直んねえから諦めた」
「すげえな悠真」
窓の外に吐かれた煙は風にのって空気を汚す。あーあカワイソウな緑たち。
ここから見える空はあの日の青とは違うけど、この人は似合う。ムカつくくらい、この背景が。
赤い頭と青い空は、あの情景は、たぶん一生こびりついて俺から離れてはくれないんだろう。
「……俺が」
俺が死ぬのは止めたのに、アンタは
「あー、マジイラつく」
小さく息を吐いて、煙の空気を吸い込んだ。
「……こいつは、いろんなヤツに好かれてっから。もう散々頑張らされて、周りのために生きさせられた。長い間病室の中で、耐えさせられただろ。あのな、もう自分のために生きさせてやろう。そういうヤツだろ、こいつ。それがいちばん似合ってるだろ」