4番青年の快走
煙草のにおいが、鼻腔をかすめた。
バニラみたいな甘いにおい。子供舌のこの人が好みそうなにおい。
甘ったるい煙はもう俺の服にも髪にも染み付いてしまったことだろう。
俺は辛党だ。やっぱこの人の考えてることは全く理解できない。
小さく、汚れた酸素を吸い込む。
「臭いんで俺帰ります」
こうしてクソガキの俺はまた、いつも通り憎まれ口をたたいて。
「へーへー。また来いよ」
一応大人しく頭をかきまぜられてから、煙草臭い部屋をあとにする。
脳裏に浮かぶ懐かしい赤を思い出して、自分の髪を直しながら。