4番青年の快走
とくにこいつは若い。あの頃の姿と簡単に重なるし、なにも変わっちゃいない。
だけど耳で鈍く光るピアスたちといつものTシャツと、猫背ぎみなだらしない座り方。どこかなつかしくて俺はまたまぶしく目を細める。
確かになつかしいのに、振り返れば昨日のことのよう。みたいな。
ああ、それだけ今までこいつと一緒に過ごしてきたって、ことか。そういうことか。
思えば長いしな。そういえば。
「なあ朔(さく)」
「ん?」
「今日お前も食ってくだろ、メシ」
顔だけをこちらにチラッと向けて当たり前のように言う伊吹に、はあ?と思わず声が漏れる。
昔は顔も肌もこんがりやけてたのになあ。白くなったな、だいぶ。
「なんでだよ、家族水入らずで食えよ。好物作ってくれてんだろ?」
「家族ぅ?似たようなもんだろお前も」
ウチの母ちゃんのメシ好きだろ、とぬかす伊吹に、いやいやいやそうだけど、いやそうじゃねえだろ。突っ込みたくなる。
灯台に夕日がかかり始めた。
今日ここについてからふたりして飽きもせずここでこうしてる。
今日も終わる。
「そうだけどお前、今日親父も帰って」
「来るよ。好きだろ親父のことも」
「たしかにユウジはいいやつ」
「な」
「いや、な、じゃなくて」
どや顔かまして来やがる。