4番青年の快走
広い倉庫で朔にバスケしようぜって大声でせがんでみたり、小麦の約束平気ですっぽかして怒られて仲直りのチューとか言って全員に見せつけてみたり、悠真シメるとか言ってボコボコにしといて手当は俺がするとか言って他の奴にゆずらなかったり。
「……お前は本当に大人になったな。よしよしえらいぞ」
「紅音さん今なに思い出してたの」
たぶんこの月のせいで、感傷的な気分になってんだ。
昔話だって思い出す。
ちょっと前までの伊吹のことだって、昨日のことのように。
「……ね、紅音さん」
それは伊吹も同じだったようで。
「俺のおねがい聞いて、紅音さん」
目じりをゆるませてふにゃりと口角を上げためずらしいその笑い方に、あたしは何も考えず、頷いてしまった。