4番青年の快走
茶色い髪がまたなびいて、かすかに風呂入りたてのせっけんのにおいが届く。それとこいつの母親ミユキがキッチンで子供舌な息子のためにはりきって作ってるハンバーグのにおい。
「うっせえないいだろ一緒に食おうぜ。いつも通りじゃん、それが」
ついにちょっとキレつつ伊吹がこっちを見上げてきた。ずっと切れないで伸びきった前髪が邪魔くさいと、ひとつにまとめデコ出ししたアホっぽいちょんまげが揺れる。
いつも通りか。
「……それもそうだな。ミユキの手料理ひさしぶりだし」
「俺も。食いきれっかなー」
頷いた俺を見て満足そうに、また空を見て足を投げ出す伊吹。その横顔は楽しそうだ。
後ろについた手と外に投げ出された足。
昔よりこいつが変わったことと言えば、やっぱり肌が白くなったことと、筋肉がおちたこと。
あと、そうだな。声が腹から出てなくて、ちょっと掠れてることとか。
「……あといい加減プリンがひどすぎる」
「なんで急に悪口言ったんだよ」
「染め直すぞそれ。明日」
「え、やってくれんの?ラッキー」