4番青年の快走
「お前肉食わねえの」
「……暑苦しいだろ、あそこ」
紙コップの烏龍茶ばかり飲んでいる俺を見て伊吹が首を傾げる。
嫌だぞあの獣たちの中に入っていくのは。
仲間たちとバーベキューをしたいと言ったのはこいつだけど、こいつはさっきから椅子に座って様子を眺めてるだけ。
それでも楽しそうだからまあヨシ。
どうやらもう、肉も水も喉を通らないらしい。きっと立ってるのも難しいんだろう。
顔色も良いとは言えないけど今日はいつもよりよく笑ってるからいいんじゃねえの。
それにこいつは、座っているだけでも人を簡単に呼び寄せる。
「あーユウジさんいい人。旦那にするならああいう人だわ」
小麦がカルピス片手に女子数人と共にやって来て伊吹の隣に並んでる椅子に腰かけた。
煙の真ん中にいるユウジに視線を送りながら、「うんうん分かる。結婚したい」「でもミユキさんも好き」女子たちは論議を繰り広げはじめる。
「ユウジ超俺似じゃん。てことは俺じゃん、旦那にするなら」
「ユウジさんが似てんじゃなくてアンタがユウジさんに似てるんでしょ。てか似てないから。アンタ全然誠実じゃないし」
「……なんで親父が誠実だと思ってんの」
「ミユキさんが言ってた」
「マジか」
伊吹の目がユウジを捉えた。