4番青年の快走
俺らみたいなのが周りにいっぱい集まるからかユウジはテンションが若くておちゃらけててほどよく適当。だけど確かに根は誠実。昔から見ててよく分かる。
……あれじゃあこいつ、伊吹のだらしなさは誰に似たんだ。
白い目で茶色のつむじを眺めていると、口々に伊吹の名前を呼ぶやつらが群がってきた。
ユウジが焼きそばを作ってる間、ヒマになったらしい。戦争はどうやら休戦だ。
「おーなんだ伊吹ィ。また女はべらせてー」
「いーっしょ、うらやましいっすか」
「はべらされてるつもりないんデスケドー」
「伊吹とか論外なんデスケドー」
「はあ? 素直んなれお前ら」
寄ってきた大柄な男たちがぶひゃひゃと笑いながら少し乱暴に伊吹の頭をかきまぜる。伊吹がこうやって歳上に頭をなでられてんのは昔からよく見る光景。
そして今日は特に伊吹へのスキンシップが激しいのは、勘違いじゃないんだろう。
「まーた小麦泣かせてんのかお前はぁ」
「むぎが俺のために泣いたことなんてねえっすよ」
「は、ちょっとアンタな……」
「いいから悠真。いちいちこいつに反応しなくていいから」
「むぎひでぇ」
わらわら囲まれて、隣にいた小麦との見慣れたツーショットもいじられる。
軽く笑って答えた伊吹に、いつものごとく突っかかってくるのは悠真。それを遮るのは小麦。
悠真は舌打ちして、睨むように伊吹を見下ろした。
「こえー顔すんな悠真!」
やって来たのは紅音さんで、どうしても伊吹を無視しておけない悠真を見て笑う。
あー変わんねえ、みんな。
集まる場所が変わっただけで、顔も見た目も関係も、ノリもテンションも、全然、変わんねえ。
たぶん一生変わんねえんだろうなあ。
伊吹、お前も。