4番青年の快走
「朔、バスケしようぜ」
「は?」
食べ終わってリビングでごろごろしてるころ。
ユウジはくだらねえお笑い番組を見て爆笑してミユキは鼻唄まじりにキッチンで洗い物と明日の朝の準備をしているころ。
ソファに座っていた伊吹が唐突に切り出した。
「夜じゃん」
「ナイターストバス対決しようぜ」
「腹いいのかよ」
「ちょー大丈夫」
食ってすぐって。絶賛消化中だろうに。
明日でもいいだろもう寝とけ、つってんのに言うことを聞かないひとりっこワガママ野郎に、ついに長男の俺が折れた。
“無理はしない”との条件付きだ。この野郎。
リビングの窓を開けてユウジとミユキも横目で見守る中、バスケットゴールがある玄関の前の駐車場で、ライトをつけて。それは開催された。
ナイターストリートバスケ対決。
やっぱり母親の料理にはパワーがあったらしい。
飛んだり跳ねたり走ったりはしないものの、 筋肉のない足で立ってボールをつく伊吹。
なつかしい、この姿。
「ミニバスから結構ガチでやってて中学もバスケ部キャプテンで4番背負ってたヤツがさぁ」
「あんだよ」
「なんっで暴走族なんて入っちゃったかね」
「アレよ。好奇心ってやつ」
一緒にバスケやってた。一緒にバイクも乗ってた。
幼なじみの腐れ縁ってやつだ、こいつとは。
「おっまえ、外しすぎ」
「お前も今フリーで外したじゃねえかよ!」
よく動く。伊吹は驚くほどよく動いた。
そうだ、バスケも言ってた。
したいって、あの時言ってたんだった。