最後の言葉
「ゲホッ、ゲホッ――」
 慣れない煙にむせ、私は大きく咳き込んでしまう。
 胸は焼けつくように痛かった。

 でも、それでも私は何度もタバコに口をつける。
 この胸の痛みが、どこか修くんとすごした時間への贖罪となる、そんな気さえしてしまうのだ。

 2人で生きようと決めて、6年。私たちの子供を失って5年。
 それだけの時間の中で、修くんはいろんないけないことに手を染め、私たちは前のように純粋に笑えなくなっていた。
 私が修くんと生きようとするだけで、多くの人が踏みにじられ、汚され、壊されていったから。

 でもそれは私がいけなかったのだ。
 弱い無様な私は、いつも修くんに守られてばかりだった。
 修くんの苦しみをすべて受け止め、生きることができなかった。
 だから、修くんはどんなに汚いことにでも立ち向かってくれたのだ。

 なのに、私はあんなに優しかった修くんをいつもイライラさせてしまい、
 そしてそのまま、あの日を迎えてしまったんだ。
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