最後の言葉
 それは、今からほんの数日前のこと。
 修くんが誰かを傷つけるのに、
 そのことで修くんと私が傷ついていくのに耐えられなかった――そんな情けないことを理由に、私は警察に伝えてしまったのだ。
 いつも修くんがこっそり私に教えてくれる話を。
 今までやってきた悪いこと、そして、その秘密を。
 まるで、私たちに溜まった汚いものを捨てようともがくかのように。

 そうすれば、きっとすべてがやり直せる。
 あの修くんと出会った頃のような時間に戻れる、そんなことを思ってしまったのだ。

 だけど結局、私の行動が呼んだのは、
 部屋になだれ込んでくる、機械のように表情を変えない警察の群れと、
 獣のような声をあげて、暴れ狂う修くんと、
 悲しさと虚しさに満ちた、彼の最後の言葉だった。
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