最後の言葉
 私は、吸い込んだ煙を一気に吐き出した。

 紫煙は、何も私にいわないまま、この部屋から消えていった。
 警察は、私の望むものを返してはくれず、ただ大切な人を連れていった。

 だけど修くんは違う、ちゃんと私に残してくれた。
 心に身体に、こんなにも修くんという名の傷痕を残した私が壊れないように、ちゃんと言葉を残してくれた。
 つらいことばっかりだったけど、私には修くんしかいないから。
 修くんが私のすべてだから。

 だから私は誰もいない部屋で、ずっと修くんを待ち続ける、それしかないんだ。
 そうして私は、
『覚えてろよ、この野郎』あの最後の言葉を守るために、

「大丈夫だよ。私、修くんのことを忘れないから」
 いつも彼がやってくれていたように、タバコの火を自分の身体に押し付ける。
 すると、少しの焦げ臭さと共に、
 灰は、まるで私の流す涙のように無残にこぼれ落ちた。
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