【短編】甘い罠
昔、ピアノを習っていた時に弾いた1曲。


私はその曲しか弾けないんだ。


楽譜を見れば大抵の曲は弾けなくも無いんだけど、あんまり上手くないから。


先生にちゃんと教わって練習したのはその1曲だけだから。


そうして私はいつも彼のためにその曲を弾く。


普段はチャラチャラしてそうな彼も、ピアノを聞くときだけはとても静かになる。


弾く側としては、こういう空気は結構弾きやすくて嫌いじゃない。



ちゃんと聞いてくれてるんだって、わかるから。











「やっぱり素敵だね、優希ちゃんのピアノ。」
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