千代紙の小鳥
 
次の日、本当は友人と遊びに行く予定だったが次回何かを奢るという条件でキャンセルし、《風見鶏》に入った。

「お。いらっしゃい。」

今日もピークを過ぎた店内には客は殆どおらず、マスターの豆を挽く音とジャズレコードの音だけが漂っている。

「珈琲お願いします」

定位置に座って昨日あれから見れなかったアルバムを開く。

けれど意識は机へと向いていて。ろくに見てもいないのにページを捲っていく。

(…絶対来る、)

根拠のない確信だけで、待つ。
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