千代紙の小鳥
もちろんそれは常に降り積もったり、せり上がったり思っていたわけではありません。
「あ、ごめん。話遮ったな。
俺に似た奴が出てきてどうしたんだ?」
そうして貴方は知らず知らずに、その凄艶なまでに美しい顔を向けて、落ち込んでいた私の心を途端に快意へと変えてしまうのです。
「あ、うん。あのね ───、」
だから離れられなくて、愛惜の想いの花がまた一輪、また一輪、心に生まれ咲いてくのです。
哀歓に介在するほんの僅かな心の場所に。
「そいつの好きな人ってどんな奴なんだ?」
「んー、優しいからこそ自分の気持ちにも一番の人の気持ちにも鈍い子。かな」
私たちの会話など声量を後ほんの少し小さくするだけで解け消えてしまうほどの喧騒。
「ふーん、花みたいだな」
その中で、また降り積もった二つの想い。
それは、“そう言ってくれたこと”の喜びと、
“その物語の結末が二人の永別ということ”への哀しみでした。