千代紙の小鳥
「もしもし?あ、お母さん───・・・え?」



呼び出された生徒、鍵を借りにきた生徒、談笑する先生同士、別の電話が鳴る音。

様々な声や音にまたかき消されてしまった私の声とは逆に、母の艶麗な声ははっきりと私の鼓膜を叩きました。







「あなたと──さんの結婚が決まったの。」



あの時私は初めて、自分の生まれた家を恨み、厭世を感じました。

朝、登校中に貴方に話していればこの電話を取ることもなかったでしょう。



まだ母の声を通している受話器をがちゃん、と元の位置に直して、私は全力で貴方のいる教室へと走っていきました。
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