千代紙の小鳥
「リュウジ!」

私は息急き切りながら貴方の名前を叫びました。

「花、?」

友達と机を囲んでパンを食べていた貴方は後ろを振り向き、私の只ならぬ表情や状態に椅子から立ち上がって私の方へと向かってきてくれました。

「…どうしたんだ?」

「どうしよう…私、」

貴方が目の前に来て視界が貴方でいっぱいになった途端、心が爆ぜたように様々な感情や想いが溢れ出し、中々次の単語が咽頭から先へと出てくれずに、止められない涙をだだ流すしか出来ませんでした。

「花、おいで」

そんな私が前で重ねていた手の右手首を優しく掴み、今私が走って来た廊下へと足を出した貴方は、いつものあなたの数倍早い歩調で私を連れて歩いていました。


只ならぬ私を連れ出してくれだけでなく、感じ取っていたのでしょう?

「…リュウジ、」

「……」


だから、そこに着くまで何も言葉を返してくれなかったのですね。
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