千代紙の小鳥
「随分長い”ちょっと”だな」

「夢見てたの。不思議な夢」


また、私たちしかいない世界。

電気の消された教室は窓から入る濃い橙とそれに混じる藍で染まっていました。

貴方と私の顔も。



「リュウジって、蛍みたいね」

「…どの辺が?」



「いなくなったりいつの間にか隣にいたり。

 ふわふわゆっくり漂っていたり。

 偶に、哀しみと喜びを交互にくれたり。

 いなくなって、光って、いなくなって。


 いつも近くにいるのに、傍にいるのに、

 光って、いなくなって、光って」


そうだ。さっきの夢で思った”何かに似ている”も、蛍だった。

貴方にそう言って、心でそう言った私は言葉を紡ぐことを続けました。
< 35 / 103 >

この作品をシェア

pagetop