千代紙の小鳥
「すみません大丈夫です。帰りましょう」

「ああ、おとうさんも帰ってきてるよ。」


決めたんだ。家のために。決めたんだ。未来のために。決めたんだ。

そう言い聞かせながらその方に向かって空虚な笑みを向けました。

その方の後ろにはこの街には必要のない護衛の方々が4、5人いて。

ああ、もう前に逃げ場所なんて…そう、落胆する気持ちを抱えながらその方の隣を歩き始めました。


刹那。













「花!!!!!」


普段聞くことのない貴方の声が夕張の空に響き、私の鼓膜を突き抜けて心に響いたのです。

校内からな表情でこちらに向かって走ってくる貴方の姿を眼が捕らえた刹那──…


「リュウジ!!!」


私の頭の中から“決めたんだ”という言葉は雲散霧消し、脚を止めるものなど何一つ残されていませんでした。


ただ、貴方にむかって走ったのです。
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