千代紙の小鳥

「では、ご家族の方も一緒に乗っていかれますか?」

「いえ、車で追いかけます。」

「わかりました。では―――・・・」

リビングで倒れたままだった母親は既に後から来た二人の救急隊員が担架で救急車へと運んで行った。

「月、陽。先に車に乗ってなさい。」

「「はあい!」」

父親から渡された鍵を兄が右手に持ち、左手を弟と手を繋いでぱたぱたと玄関へと駆けてゆく。

ポンッという音と共にライトが光り、開錠した事を知らせた白のワゴン車の後部座席へと乗り込む。

数分して運転席へと乗り込んだ父親は、いつも持ち歩く鞄を助手席へ置いて、兄がシートベルトをつけたままいっぱいに伸ばした手から鍵をもらって、鍵穴へと差し込んだ。


「「れっつごー!!!」」



母親が乗せられた白い車は、絶対的なヒーローなのだ。
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