千代紙の小鳥
ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・

面会時間の終了した病院内は、何百人もの人間がいるにも拘らず、しん、と静まり返っている。

その静寂の中で、母親の身体から繋がる線の先で心拍数を表示する機械が、無機質に声を出す。

「―――せんが恐らく何か大きなショ・・・」

「ショック?」

「―――マや、心の傷といったメンタ・・・」

「……」

「―――かお心当たりは?」

”診察室”と書かれた部屋の扉にへばり付き、中から聞こえてくる会話を盗み聞こうとしている彼ら。

「…一つだけ、あります。」

聞き取りづらかったり、言葉の意味が理解できない事が面白く、ふふふふふっと鼻で星の輝きの色と音の様な笑い声を廊下に跳ねさせる。

「息子たちです。」

突如会話に登場した自分たちに、顔を見合わせて「お?」と同じタイミングで兄は右へ、弟は左へと頭を傾ける。

その一言を発した声だけでも、室内の雰囲気が落ちたことがわかった。

「・・・息子さんたちは、双子………でしたね。」

「はい。」




「”双子は、忌み嫌われる存在”です。」

「「え……」」

“忌み””存在”という単語の意味は分からなくても、六年と数か月自分たちが生まれてからずっと傍にいた”双子”という単語と”、漢字は読めずとも意味は道徳の時間に習った”嫌い”という単語。

「きらい?」「パパが?」

先程まで跳んでいた笑い声は、いつの間にか色も音も無くして床に落ちていた。
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