千代紙の小鳥
「おーい!!月!陽!」
「月くん、陽くん。お母さんの調子どう?」
「「ううんー」」とふるふると同じタイミング、同じ方向、同じスピードに首を動かす彼らは、今日も双子だ。
「はやく目覚めてほしいねー。」
先程と同様に「「うん!」」こくんと今度は首を落とす。
「お兄ちゃんお姉ちゃんこれー」「八月号だよー」
「ありがとう。」
「ありがとな。」
「「ばいばーい!」」
両手に数十枚のそれを抱えて、今日も右手と左手は繋がっていて。
「もう3年になるんだね。」
「ああ。」
綾織の様に美しい紙で作られた鳥の羽根が挟まれた栞が、《双子新聞 8月号》と書かれたA4の紙の上に乗った本の間からふわりと落ちる。
「栞落ちたぞ。」
「え。わ、ありがとう。」
栞を受け取り前方を見ると、あの日と同じ様に左手と右手を繋いでいる彼らが走っている。
「あの子たちのお母さんが倒れた日、私定期検査で入院してたの。」