千代紙の小鳥
「よし。」

窓から見える夜景を見ながら、10分程かけて飲み終えたカップを専用ゴミ箱に入れて、病室に戻ろうと腰を上げた。

(子ども、だったよね。)

ふと、先程病院内に入って行った人たちの事が気になった。まだ車は止まっている。

何が私の足を動かすのかはわからないのだけれど、病室へと戻る筈の足は、エレベーターのある方へ向かっていく。

チーンと機械的な音が私一人が乗る内部に響く。ガチャンとそれ以上に機械的な音とともに開いた重厚な扉からエレベーターを降りると、私がいた階以上に静まり返った一階。

「救急って、北なんだ。」

年に何十回と通っている病院も、救急へ続く通路はいつも意識が朦朧としていて自分の足で通った事は無いので、案内板で場所を確認してから自分の足跡だけが響く通路を歩く。

と、救命へと続く通路を歩いていた私の耳に、微かに届いた「「え…」」という声。

全力で走ったことのない足で届いた方の廊下へと駆け足で向かうと、座り込んでいたのは。


「双子……………?」


同じ顔、同じ声、同じ体勢の―――――― 男の子の双子。
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