千代紙の小鳥
この街にある学校へ続く道の途中に《風見鶏》という喫茶店がある。
もうすぐ創業五十年になるらしいその店はカウンターが八席とかなりの間をあけてテーブルが四つ。
マスターの圧迫感なくゆっくりとくつろいでもらいたいという計らいが随所に散りばめれた店内は、そこだけ時間の流れが外界とは異なっていると感じるほどにゆったりとしている。
からん、ころん、
昭和の喫茶店らしい音色が、扉を開ければ店内に響き渡る。
「空くん、いらっしゃい。」
「こんにちは」
高校の入学式の日にここへ来て雰囲気や珈琲の味がなんとなしに好きになり、今ではなんとなしなまま、なんとなしにほぼ毎日通っている。
風見鶏、それは風の方向や強さを知らせるだけの測量の玩具。