千代紙の小鳥


俺が一日目のその日から今日までずっと座っている場所は、カウンター席ではなく入り口から三番目のテーブル席。

一日目にカウンターが満席となっていたため空いていたその席に案内されただけ。

今でもさして意味があるわけでもなくこれまた、ただなんとなしに。


「珈琲お願いします」

「はいよ。」

俺がいつも来るのは学校終わりなので閉店まで約二時間程。お昼過ぎからそれまでの時間がピークの《風見鶏》には、お客はいつも俺を合わせて一人、二組ほどしかいない。

そんな少し寂しい店内に静かに流れるのはマスターが趣味で集めているらしいジャズレコード。

会話の、読書の、勉強の、邪魔にならない程度に流されているのであろう音楽は、それどころか更に弾ませ、世界へと引き込み、集中力を高めてくれる。

俺は専ら読書派なので、今日も先週購入した文庫本を鞄から取り出そうとスクールバックのチャックを開けた。

(・・・あ、)


目的であった本の横に並んだそれが、本より先に俺の目に映った。

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