千代紙の小鳥


それからマスターは数分アルバムを眺めた後、「お、注文が入ってるんだった。」とカウンターへと戻っていった。急いでいる様子は全く見受けられなかった。


《風見鶏》と同じ雰囲気のマスターにまた少し癒された後、再び友人が撮ったアルバムに目を落とした。

(見ると…)


いつも見ているはずの場所や何処の場所を流れているのか分からない広く緩やかな川。


(美しい、か)


この街は、本当に美しいのよ。と街の人が誇らしげに観光客に言っているのを聞いたことがあるが、このアルバムを見て俺もそう思った。


綺麗、穏やか、絶景、そんな言葉では足りないほどに、美しい。


その美しさは清浄、だからというだけではない。人々や建物がそう、というだけではない。

アルバムに挟まれた全ての写真が見えない何か、分からない何かに包まれているような、気がして。


「 この街は、本当に美しい 」


思わず想いが言葉となって自分の身体から零れた。
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