千代紙の小鳥



突然の音に、身を固めた。

(なんだ…?)

音がした所を凝視するが、別に何も変化している様には思わない。いつもと同じ、というより今さっきまでと同じダークブラウンに模様があるだけ。

けれど確かに聞こえた軽快な音。

「あの音って…」

確かめる為に机を指で軽く叩いてみれば。

とととととん、と。とと、とと、と。

「やっぱり」

突然聞こえてきた音と同じ音がした。

左手は頬杖をついていたし、右手はアルバムに触れていたので俺自身が鳴らしたものではない。

かといってさほど大きくないこの音が、数メートル向こうで談笑しているお客の机から、あんなにはっきりと聞こえてくるはずもない。

「なんだったんだ」

突然の減少に呆けながらも、なんとかその正体を掴もうと暫くあぐねいていた。

するとそんな俺に気付いたらしいマスターが茶菓子の乗った皿を持ちながらこちらへと近づいてきて。

「どうしたんだい?珍しく中身も減ってないね。」

さっきお客さんからもらったマカロンのお福分け。と手に持っていた皿を珈琲カップの横に置いてくれた。
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