この俺が幽霊に恋をした!?


《ココ、マガッタ》

《泣いてタ》

《アノ子ハ、ナカマ。アノ世のモノ》


萌絵が幽霊なんて、そんなことまで分かるのか……。

「さんきゅ!お前、名前は?」

《……》


幽霊は口をつぐんだ。
そして躊躇いがちに口を開く。

《ケイ》

《僕ノ名前ハ、ケイ》


そこで初めて、目の前のこいつが男であると知る。

「そうか、ありがとうなケイ!」


礼を言ってケイが指さした方へと走る。

途中、振り返ったらそこには既にケイの姿は無かった。


「……行き止まりかよ」

目の前に立ちはだかるのは大きなブロック塀。

萌絵……どこだ。

心の中でそう呟いたとき、ふとどこからか風に乗って何かが聞こえてきた。


それは優しくて、暖かくて……

けれど悲しい旋律。

まるで、誰かの心を歌っているような―。
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