この俺が幽霊に恋をした!?


そのメロディーの聞こえる方へ、音を立てないように静かに近寄る。

この、声――……


声のする方へ顔を向けると、そこには彼女がいた。

彼女は無人となった家の屋根に腰掛けて、
そっと口ずさんでいる。

そんな彼女の瞳は揺れていて、瞬きでもしたら透明な雫が今にも零れ落ちてしまいそうだ。


俺は数歩後ずさると、近くの路地に身を潜めた。

ブロック塀に背を預けて目を閉じる。

声をかけたい、謝りたい。

けれど、いま声をかけてしまったらまた何処かへ行ってしまいそうで、怖いんだ。
< 264 / 307 >

この作品をシェア

pagetop