この俺が幽霊に恋をした!?
そのメロディーの聞こえる方へ、音を立てないように静かに近寄る。
この、声――……
声のする方へ顔を向けると、そこには彼女がいた。
彼女は無人となった家の屋根に腰掛けて、
そっと口ずさんでいる。
そんな彼女の瞳は揺れていて、瞬きでもしたら透明な雫が今にも零れ落ちてしまいそうだ。
俺は数歩後ずさると、近くの路地に身を潜めた。
ブロック塀に背を預けて目を閉じる。
声をかけたい、謝りたい。
けれど、いま声をかけてしまったらまた何処かへ行ってしまいそうで、怖いんだ。