強引な彼との社内恋愛事情
エレベーターの中で


自分でもなんて面白いことをしてしまったのだろうと後悔している。
滑り台じゃなくて階段を駆け下りれば良かったんだ。


土日を挟んだ月曜日。
いい加減に怒りは冷めてくだらない自己嫌悪に陥っていた。

エレベーターの前には、いつものように人が溜まっている。

紺色のストライプのスーツが目に入って、ドキッとした。
広重だって一目でわかった。
声はかけないでおこうと、三人分の間隔を空けて俯いた。


「広重くん、おはよう」と女性の声がした。


「おはようございます」


「花見、なんで来なかったの?」


「花見?ああ。ちょっと用事ができたから行けなくなって」


「広重くん来るの楽しみにしてたから残念だった」


たぶん、この声は。
私と同期の総務の金子さんだ。
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