強引な彼との社内恋愛事情


午前中の会議が終わると、調度よくお昼休みになった。

とんかつ屋のランチにしようと思ったら混んでいて、今日も結局、梶間食堂だ。

緑茶をすすりながらスマホを見た。

特に誰からもかかってくるわけでもない。

ガラガラと入り口のドアが開く。広重が立っていた。その後ろには金子さん。

まさか、週明けすぐにここに来るとは思わず油断していた。

気まずくて目を逸らしたのに、「あっ。千花さん」と声をかけてきた。

それでも気づかない振りをした。


「広重くん。あっち空いてるよ」


と金子さんの声にホッとする。広重も話しかけるのをやめた。


「日替わり定食です」


と店員が運んで来ると同時に顔を上げた。
だけど、見ないようにした。


「あそこ行きたいんだよね」とか「今度呑みに行こうよ」なんて金子さんのはしゃいだ声と同調するような広重の声がする。

そんな金子さんが私と同い年になんて思えなくて、豚肉の脂身を端に寄せた。
< 31 / 102 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop