強引な彼との社内恋愛事情
その背中に、「広重、ありがとう」とだけ伝えた。
聞こえなかったのか、特に返事はなく、ドアが閉まる。
ひとりになったと思うとホッとする。
不具合の発生手順や内容を打ち込んで、設計側に送った。
ようやく一段落。
ふぅっと、一息を吐いた。
ブラインドの隙間から外を見る。
向かい側の会社の灯りもポツポツと点いているだけで、路上にいる人もまばらだ。
私もそろそろ帰らねば。明日も早いし。今日はご飯どうしようかな。本当にコンビニ弁当になってしまいそう。
広重が置いていってくれた缶コーヒーを手に取る。ブラック。
気合い入れたいときによく飲むな。
まだヒンヤリ冷たい。なんとなくプルタブを開ける気になれず、鞄にそっと閉まった。